食から創る家づくり

旭川圏で「食」に関わる各分野のプロが、家族の幸せを実現する「食」と「家」のあり方を議論する座談会「食から創る家づくり」。

第1回は菜園とキッチン、食品庫を含めた、家族の健康的な食生活について、尾崎満範編集長に伺います。

座談会「食から創る家づくり」

写真:尾崎満範編集長

第1回 家族の健康を守る!野菜は自給&保存。外食は無化調のお店を!

美食&情報マガジン kutta 尾崎満範編集長
(デザインスタジオ・オザキ代表)

給食が食べられない子ども時代

私は、子どもの頃から偏食で、給食の9割は食べられませんでした。母が工夫してつくってくれる手料理でも、半分は食べられない状況でした。

例えば、母が畑で作ったナスやトマトなどは美味しく食べられます。でもスーパーで買ってきた野菜は美味しく感じませんでした。市販のめんつゆもダメだったのでお蕎麦も無理。給食は、なかなか食べ終わらないので、先生に注意され、5時間目の始業ベルまでに食べ終わらなかったり、耐えられずに吐いたりという日々でした。

身体も細く、健康面でも大変でした。なぜ食べられないものが多くなってしまったのか。原因がわからず大人になっても苦労しました。

フードライター「ミニぐるめ君」になる

私は旭川のとなり町・東川町で、1998年から「デザインスタジオ・オザキ」という会社をやっています。観光パンフレットや会社案内などの制作が主な仕事です。

旭川では、食材を買って料理する際も、飲食店で食べる際も、安心できる食事を見つけるのが大変な苦労でした。そんな時、仕事で飲食店を紹介する役割を任されました。そこで私は、思い切って自分が美味しく食べられるお店だけを紹介しようと考えました。

北海道新聞旭川支社が発行するフリーペーパー「ななかまど」に、フードライター「ミニぐるめ君」という名前でコラムを連載する仕事で、2001年からずっと続けています。また、自社制作の飲食店情報フリーペーパー「kutta(くった)」を、季刊誌として発行しています。

旭川で無化調(化学調味料不使用)の飲食店を紹介

飲食店の大半は化学調味料や添加物を使っています。そんな中で、全体の1割もありませんが、化学調味料や添加物を使わず、食材もよく吟味して仕入れている飲食店があります。例えば道産知床鶏を生で仕入れ、精製塩ではなく岩塩で調理する焼き鳥店や、化学調味料を使わないラーメン店、冷凍物を一切使っていないお寿司やさんなど、安心して美味しく食べられる店もあります。

料理に化学調味料や添加物が入っているかいないか、普通の人は、食べただけではわからないかもしれません。でも、化学調味料が入っていない料理を1カ月くらい食べていると、入っている料理がわかるようになります。化学物質であるグルタミン酸ナトリウムが入った食事を食べると舌にモヤがかかったような味わいに感じたりします。

化学調味料、添加物、冷凍食品などを使わないで全部手作りして飲食店経営をするというのは大変な努力です。そういったお店を、私と同じような悩みを抱えている方、食の安全に関心のある方に伝える。こうした情報発信は「失敗のない飲食店選びができる」と喜ばれています。

自宅の菜園で40種類の野菜を自給

今回の座談会のテーマ「食からつくる家づくり」に関して言えば、一番大切なのは、家族の日々の食を見つめ直すことだと思います。

尾崎さんのブログ「わさび茶漬けよりウマイもの」の中には菜園での野菜づくりも紹介されています

安全、美味しい食事を作って食べることの大切さ

2002年に、東川に菜園付きの事務所兼自宅を建てました。それまでコンビニなど、外食が食生活の中心でしたが、健康診断では5項目ほど要注意の箇所がありました。

100坪の菜園で野菜作りを行い、できる限り添加物と無縁の生活を心がけているうち、健康診断でひっかかる箇所が無くなりました。そんな経験から食事の大切さを実感したのです。

妻も以前、病気になった際、医師から「一生薬を飲み続けなければならない」と宣告されたことがあります。しかし毎日無農薬の玄米を食べているうちに病気も治り、今では服薬が必要なくなりました。

庭で収穫した野菜が食卓に

外食や冷凍食品中心の食生活を繰り返している方は、自分、そして家族のために、野菜を自分で育て、健康に良い調理法で調理して、家族と一緒に食べるという食生活、生活習慣に切り替えることをおすすめします。私たちの身体は食べ物で出来ています。糖尿病などの生活習慣病だけでなく、いろいろな病気の予防につながります。

スーパーなどで売られているピーマンやトマトは未熟な状態で収穫し流通に乗せることで、日持ちを確保しています。未熟なので栄養価が低かったり、流通されているうちに栄養価が下がったり、味の面でも、自宅の畑で完熟させたものに比べると劣る面があります。

自宅の庭で育てるか、近隣の農家さんとご縁を深めて、完熟した美味しい野菜を手に入れる、そういう文化ができれば、日々の生活がもっと豊かになると思います。

高断熱・高気密住宅の欠点とは?

私は以前、住宅雑誌の取材をしていた経験があります。多くの住宅会社が口を揃えて、住宅の高断熱・高気密をPRしていました。お風呂も玄関も暖かく省エネだと。「素晴らしいですね」と答えていましたが、内心疑問がありました。

ビタミンやミネラル、食物繊維などを確保し、健康な食生活を送る上で、毎日の食卓に野菜は欠かせません。しかし北海道ではほとんどの野菜が冬には育ちません。スーパーで買うとしても冬場の野菜は高く、栄養価も旬の時期より劣るように感じます。

この問題を解決するには、自宅の庭で野菜を育て、その野菜を適度に涼しい部屋で保存し、冬の間でも美味しく食べるという生活スタイルが望ましいはずです。

しかし、自宅に、適度に涼しい部屋がないと、野菜を保管できません。ジャガイモなどは暖かい部屋ではすぐ芽が出てしまいます。

私の場合、自宅に地下室があるので秋に収穫したジャガイモや大根などをかなりの量、長期間保存できます。

例えば私は毎年大根を200本くらい自宅の菜園で育てて収穫します。さすがに200本は保管できても食べきれないので、Facebookで「大根をおすそわけします」という告知をします。するとたくさんの人が大根をもらいに来ます。とはいえ「好きなだけどうぞ」と呼びかけても、せいぜい皆さん2本くらいしか持って行きません。

皆さんの家も高断熱高気密で、床下にも断熱がされていて、自宅で涼しく保管できる場所がないから、数日で食べきれる分しか持って行けないのです。

家には「食品庫」か「地下室」が絶対必要

野菜を自宅の庭でつくり、長期保存して通年で食べるという、安全で健康的な食生活を皆さんにぜひおすすめしたいわけですが、そこでネックになるのが住宅だったのです。

住宅性能を高めて省エネと住環境、結露の問題などをクリアしつつ、同時に野菜を長期保存するために、常時5℃~10℃くらいの室温をキープできる部屋、具体的には食品庫(パントリー)か、地下室を現代の住宅でも標準装備する必要があるのです。

そこで、私は、旭川の住宅会社の社長であり、同時に、住む人のライフスタイルに強い関心を持っていて、酪農学園大学出身で食や農にも詳しいアーケンの藤原社長に相談しました。

藤原社長は、キッチンに食品庫(パントリー)を作った経験も豊富で、食品庫を断熱し、庫内外の温度を感知できる空調設備も備え、食品保存に適した環境をつくることができます。

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