江丹別「aman」がコンテナでパンを焼く理由―小倉孝太郎さん

旭川の住宅会社・アーケン株式会社は「建築」「住宅会社」の目線や立場ではなく、顧客のライフスタイルを第一に、趣味、仕事、食、子育てなどを深く理解することを大切にしています。このブログでは、さまざまな形でご縁をいただいた、旭川圏で素敵な活動をされている方々を連載でご紹介しています。第4回は、旭川市・江丹別のパン屋さん「ブーランジェリーaman(アマン)」を経営する小倉孝太郎さんです。

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旭川市中心部から北西に約25km、そば産地として東京でも知られる江丹別地区。コンビニや商店はないものの、そば屋さんやフレンチレストラン「Chirai(チライ)」が人気です。そのChiraiと同じ敷地内に2021年4月にオープンしたアマンは、行列ができるパン屋さんとして知られ、遠方から買いに来るファンもいます。店舗は、コンパクトながら目を引く海上コンテナ。アーケン社長の藤原は、小倉さんの移住からサポートし、プランニング、施工まで一気通貫で手がけました。その開業ストーリーをお届けします。

藤原「江丹別でパン屋をやろうとしている人がいる―。初めにそう聞いた時は驚きました。あらためて経歴を教えてください」

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小倉「幼稚園の頃から、夢はパン屋さんでした。札幌のチェーン店やホテルで一から学び、旭川の結婚式場のベーカリー部門で経験を積みました。新しいパンに挑戦し、小麦粉や米粉をはじめ食材の研究を重ねましたが、1人の職人としてじっくりパンに向き合って表現し、直接届けたいと思って独立しました」

藤原「江丹別を選んだ理由は?」

小倉「ブルーチーズで有名な江丹別の伊勢昇平さんと知り合い、食材と可能性にあふれたここなら『今までにないパンを作れる』と思ったからです。コンテナハウスなら、多くの人の目に止まりやすく、初期投資を抑えられると分かったことも大きかったです」

藤原「もともと、コンテナハウスに興味はありましたか?」

小倉「開業の2~3年前から、面白いなと気になっていました。ただ、大きな機械が入るのか、300度の高温になるオーブンを2基入れて、熱や蒸気がこもらないか...など不安な部分もありました」

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藤原「計画が前に進んだ背景は?」

小倉「藤原さんや設計の太田貴洋さんと、『店舗をコンテナで作るとどうなるか』を具体的にシミュレーションを重ねました。その結果、中古の海上輸送コンテナをベースに使い、費用を抑えながら開業できるという光が見えました」

藤原「パンを作るからこそ、気を遣う点はありますか?」

小倉「寒すぎると水分が飛んでパサパサになり、暑すぎると蒸れてしまうのがパンの難しいところです。保健所から、商品を裸で売らないよう指導があったこともあり、太田さんと相談しました。ケーキ屋さんのように、ショーケースで売る形に落ち着きました」

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藤原「どうやって売るかまで一緒に考えましたね」

小倉「アマンが得意なハード系や、一番人気のクロワッサンは、個包装で密閉すると湿度がこもって、ふわふわ感がなくなってしまいます。コロナの影響で個包装が広まっていましたが、避けられて良かったです」

藤原「2021年の夏は、江丹別が日本で一番暑い38度超えの日もありました。実際、仕事をしていてどうでしたか?」

小倉「断熱材をしっかり入れているのと、エアコンと窓の位置を工夫して熱を逃がす空気の流れを考慮しているので、パン作りに問題はなかったです。逆に冬はマイナス30度を超えとて日本一寒い日もあります。オープン前ですが冬も経験しました。この寒暖差を乗り越えられるのだから、コンテナの可能性は全国どこでもあるはずです」

藤原「コンパクトな『箱』ですが、使い勝手はどうですか?」

小倉「高さが約2.8mのタイプにして正解でした。コンテナの幅は約2.4mですが、長さは約12mと長いです。中央に動線を置き、効率的に製造機械をレイアウトしたので動きやすく、狭い感じはしません」

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藤原「コンテナそのものへの反応はどうでしたか?」

小倉「オープン前は『物置かと思った』という声もあったので(笑)、後で『本当にパン屋さんなんだね』と驚いてもらえました。インパクトがあるので、江丹別の入り口というか、引き付けるきっかけとしてコンテナは正解でした。共同経営の形を取っているChiraiはフレンチですが、パン屋はもっとハードルが低いので、多くの人が江丹別に来る理由になっているかなと思います」

藤原「開店時間の前から行列ができる人気店です」

小倉「おかげさまで、地元のJAへ100人分を卸した後に店を開け、多い時は100人以上が来てくださり、午前中に完売することも多いです。近所の人とコーヒー片手に話しながら暮らす、スローライフをイメージしていたのですが(笑)」

藤原「どんなお客さんが多いですか」

小倉「パン好きの方は、網走や稚内、札幌など遠くからもいらっしゃいます。『冷凍の通信販売をしてほしい』という要望もいただきます。江丹別のご近所の皆さんが知り合いとシェアするために、たくさん買い込んでくださることも。旭川市内のお客さんが多いですが、朱鞠内湖のある幌加内町からもたくさん来ていただけます」

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藤原「パンは素材にこだわっていますね」

小倉「旭川のJAの黒豆『黒い恋人』や、江丹別のそば粉をはじめ、地元の穀物を積極的に使っています。店名のアマンはアイヌ語で『穀物』という意味です。会社員時代から穀物にはこだわり、新しい食材を研究していました」

藤原「江丹別のそばは道外でも有名ですし、目の前にそばの製粉工場がありますから、これ以上ないくらいの地域密着ですね」

小倉「僕がほれ込んだ江丹別に来てもらえたら、とても嬉しいです。そばも、チーズも、レストランも、パンもある。素敵なキャンプ場も動き出しています。どれか1つにでも関心を持ってもらえれば、江丹別の入り口になります」

藤原「伊勢さんやChiraiオーナーの嵯城さんとアーケンで打ち合わせしていた時、来てくださったのが小倉さんとの初対面でしたね」

小倉「藤原さんは移住関連の補助金を教えてくれたり、いろいろな人を紹介してくれたり。『あれ、建築会社の人じゃないのかな』と思うくらいでした(笑)。建物だけではなくて、建てる前と後のサポートまでしていただきました」

藤原「営業して初めて迎える冬はどんな営業スタイルですか?」

小倉「2022年1月~4月中旬は店舗を閉じる予定で、卸しやChiraiへの提供に集中し、これからの展開もじっくり考えていきたいです」

藤原「今後の展望を教えてください」

小倉「今、江丹別らしい食材はカンパーニュに使うそば粉だけですが、ブルーチーズの他にも素晴らしいチーズを生産する方がいらっしゃいます。そのチーズやChiraiのベーコンを使うなど、『江丹別ならではの地産地消』を進めたいです。江丹別は1つになると大きな力があるし、すでに、オール江丹別で活動できる手応えをつかんでいます」

藤原「江丹別では、伊勢さんが『世界一』を掲げたサウナも2021年12月のオープン予定です。ますます目が離せない地域で、私もワクワクしています」

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『ブーランジェリーaman(アマン)』

〒071-1173

北海道旭川市江丹別町中央121-2

営業時間:10:00~15:00(なくなり次第終了)

定休日:月曜

公式サイト https://www.facebook.com/boulangerie.aman 

『イタリアンレストランChirai(チライ)』

〒071-1173

北海道旭川市江丹別町中央121-1

営業時間:ランチ11時~(ラストオーダー14時)、カフェタイム 14時~15時、ディナー17時~(ラストオーダー20時)

定休日:月曜、火曜(月曜が祝日の場合は火曜休み)

電話(0166)76-4747

公式サイト https://www.facebook.com/Chirai-%E3%83%81%E3%83%A9%E3%82%A4-Restaurant-Cafe-100849541267470/about/?ref=page_internal